肌の乾燥は、湿疹ができる大きな原因のひとつです。乾燥肌をかくと、普段ならそれで収まるはずのかゆみがひどくなり、湿疹が悪くなっていくという方向に進みがちなのです。
肌は体の表面で、異物が体内に入るのを防ぐ役割がありますが、その肌の外側にある表皮も、肌のなかに刺激物がもぐり込まないように保護しています。しかし肌が乾燥すると、そのシステムが乱れてしまい働かなくなることもあるのです。しっとりした皮膚を保つために、その仕組みを知っておきましょう。
乾燥肌になるとバリア機能が低下する
湿疹とは、肌が炎症を起こしている状態です。主な症状はかゆみで、かけばかくほど悪化しやすくなります。その湿疹ができる理由のひとつが乾燥。乾燥肌になってしまうと、皮膚の表面にある角質がはがれやすくなります。角質がはがれるような状態が続くと、細胞の間に小さい隙間ができて、皮膚を刺激する物質が入り込むようになるのです。
そして神経は刺激を「かゆみ」と感じて、かいたりこすったりするという行動を取ってしまいます。乾燥肌は、肌のバリア機能を低下させるのです。肌は、その表面に皮脂や水分でこしらえたバリアを張り、異物が侵入しないような防御システムを作っています。
みずみずしい肌は、傷や異物からその奥にある神経を保護して、刺激のダメージを抑えてくれているのです。しかしバリア機能が低下した乾燥肌は、刺激をそのまま素通りさせてしまいます。バリアがなくなってできた隙間からは、肌の水分がさらに蒸発するという悪循環も生まれます。
かくことで肌はもっと荒れ、刺激を受け続けた神経は肌の表面に伸びていきます。そうすると、今までは感じなかったような小さな刺激もかゆみとして反応するようになって、またかいてしまうのです。肌をかかずに皮膚を保護し続ければ、かゆみは収まっていきます。
ですがかゆみを我慢するのはストレスがたまり、こらえ切れずにかくうちに炎症もひどくなって、かゆみは強まります。ただ我慢するのではなく、保湿クリームなどを塗って直接肌を守るように気を付けることも大切なのです。
乳幼児は乾燥肌になりやすい?小児乾燥性湿疹に注意
赤ちゃんの肌はみずみずしくつややかというイメージがありますが、意外と乾燥による湿疹に悩まされやすいのです。生まれてから数カ月は、赤ちゃんの肌は皮脂でうるおってオイリーで、皮脂過剰が原因の湿疹ができることもあります。それはお腹のなかにいるときに、皮脂を分泌させるホルモンを母親からもらっているからです。
しかしそれがなくなると、皮脂の分泌量が減っていきます。そのため逆に肌が乾燥しやすくなってくるのです。そのタイミングが冬場など、空気が乾燥する時期と重なると、まだ肌が育っていず弱いこともあって悪化しがちです。赤ちゃんにかゆみを我慢させることはできないので、こまめな保湿をしながら、清潔さを保つことが乾燥性湿疹をひどくさせないために大事です。
皮膚をごしごしこすって洗うと皮膚のバリアが傷付いて、乾燥が進む原因になりますが、洗わないのも良くありません。乳幼児は新陳代謝が活発なうえ、食べかすなどの汚れもこびり付いてかゆみの元になるので、刺激の少ない洗浄剤でやさしく洗ってあげましょう。
小児乾燥性湿疹は汗ばむ季節になると落ち着きますが、子どもの皮膚は大人に比べてかなり薄くてやわらかくできていて、弱い状態です。皮脂腺も成長しきっていないので、皮脂の量も安定しません。
そこで、また乾燥する季節になると湿疹が再発することもあります。かさかさが気になる時期は、赤ちゃんや小さい子どもの皮膚にとってもつらい季節なのです。
お年寄りに多い皮脂欠乏性湿疹!最近では若い世代にも拡大
皮脂欠乏性湿疹は、かつては高齢者が発症しやすい湿疹でした。中高年になると皮脂の分泌が衰えてくるので、寒くて空気が乾く時期になってくると、皮膚のバリアが損なわれたお年寄りがかゆみに悩まされるのです。
しかし皮脂欠乏性湿疹は、きれい好きで、体を頻繁に洗う若い世代にもめずらしくない症状になってきています。皮脂欠乏性湿疹では、角質がはがれて肌の表面が粉を吹いたようになります。皮膚バリアがいたむと、皮脂によって弱酸性に保たれている肌がアルカリ性に傾き、刺激の原因になる雑菌も繁殖しやすくなります。
だからといってやみくもに洗えば炎症がひどくなるので、やはり清潔さを保ちながらの保湿が必要になってきます。皮膚は水分が減ってくるとそれを防ごうとして、乾燥肌に皮脂をたくさん分泌し始めます。ですがそれを嫌って洗い落としたり、あぶらとり紙で脂を取り過ぎたりすると、乾燥が強くなりながらもオイリー感があるという、アンバランスな皮膚の状態になるのです。
オイリーな肌は乾燥が原因の場合があることも念頭に置いて、脂が浮いても多少は残す程度のひかえめな取り方をすることで、肌のバリアを守りましょう。またストレスや睡眠不足、偏った食生活でも皮脂の分泌量は乱れます。
とはいえ忙しい毎日のなかで手厚く体をいたわるというのは、わかっていてもなかなか難しいものです。足りない栄養素に関してはサプリメントなどの助けを借りて、やりやすいところから皮膚の乾燥をやわらげ、皮膚バリアを保つよう心掛けましょう。