毎年花粉が飛ぶ季節になると、花粉症に悩まされているという人はかなりの数にのぼるといわれています。花粉症になると鼻水やくしゃみが止まらなくなり、仕事や家事にも支障が出て困っている人もいるでしょう。そういった人は、花粉症の症状を軽減してくれる治療法や薬があれば試したいと考えているはずです。
そこで、まず花粉症が発生する仕組みを解説したうえで、花粉症の薬の種類や治療方法、そして生活のなかで注意すべきことなどについてお伝えします。
花粉症の仕組みとは?
人には免疫システムがあります。免疫システムとは、体内に入ってきた物質を異物かどうか判断して、異物であれば排除するシステムのことです。花粉症の症状は、この免疫システムが花粉を異物だと判断して体外に排出しようとすることによって発生すると考えられます。
まず、花粉が鼻の粘膜に侵入すると異物かどうかを判断する細胞に触れ、リンパ球にその情報が伝わります。リンパ球はその情報を受けて、花粉に合う異物管理センサーの役割を果たすIgE抗体を作り出します。この反応のことを感作といい、初期のアレルギー反応です。
IgE抗体はリンパ球から肥満細胞に移動して、次の花粉の侵入を見張ります。肥満細胞は鼻や目の粘膜に多いとされています。その後、実際に花粉が飛散するとIgE抗体と花粉がくっつき、肥満細胞中のカルシウムが出ることで筋繊維の収縮が起こります。その結果、蓄えていたヒスタミンや血小板などが放出されることになります。このヒスタミンが鼻水やくしゃみ、鼻のつまり、そして目のかゆみなどの症状を引き起こします。
花粉症対策に役立つ薬の種類
花粉症対策に役立つ薬にはさまざま種類があります。主な薬のタイプは3つです。
ひとつ目は、抗アレルギー作用の薬です。肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制することで、花粉症の症状を抑えるタイプの薬です。副作用が少ない分、効果もマイルドなタイプが多いため、即効性は期待できないでしょう。花粉症発症前に飲んでおくと、より効果的だといわれています。
内服薬タイプのものや点鼻薬タイプのもの、さらには点眼薬タイプのものもあります。
2つ目は受容体拮抗薬です。抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬ともいわれます。花粉症の症状を引き起こす原因となるヒスタミンやロイコトリエンなどが、粘膜にある受容体を刺激することを阻害して症状を抑えるタイプの薬です。
3つ目はステロイド薬です。副腎皮質ホルモン剤と呼ばれることもあるステロイド薬は、炎症や痛みを抑制するタイプの薬です。発生してしまった症状を和らげることが目的です。強力な効果が期待できる分、副作用も出やすいといわれています。内服薬、点眼薬、点鼻薬があり、処方箋が必要となる薬も多いです。
シーズン前から行う予防治療
花粉症で悩む人のなかには、症状がひどくなってから薬を飲んだり医者に行ったりすることで花粉症を乗り切ろうとする人もいます。しかし、花粉症の症状がひどくなってからでは治療の方法も効果も限られるケースが多いです。できれば、花粉症が発症する前から予防治療を行うことをおすすめします。予防治療を行うことによって、花粉症シーズン中の症状を軽減できる可能性が高くなります。
花粉症シーズンの1~2週間前から抗アレルギー薬や抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン薬などを服用すると、症状軽減が期待できるでしょう。抗アレルギー薬は、ロイコトリエンやヒスタミンの放出を抑える薬で、効果が出るまでに2週間程度かかるといわれています。抗ヒスタミン薬は1~2日、抗ロイコトリエン薬は1週間程度効果が出るまでに時間が必要です。
症状を改善する生活上の注意点とは?
花粉症は薬に頼る方法だけでなく、日常生活のなかで工夫することで症状を軽減できる可能性があります。日常生活のなかでできる花粉症対策は主に2つあります。ひとつは、花粉を遠ざけること、もうひとつは食生活の改善です。
ひとつ目の花粉を寄せ付けない具体的な方法としては、メガネやマスクの着用が有効です。メガネについては横までガードされているものがおすすめです。マスクも鼻の脇からの花粉侵入を防ぐ立体タイプがいいでしょう。また、布団は部屋干しにし、帰宅したら玄関で花粉を落としたうえで、すぐにシャワーを浴びることで外からの花粉の侵入も最小限に抑えます。
2つ目の食生活の改善のポイントは、動物性脂肪摂取を抑制することと、アレルギー症状抑制効果があるといわれている青魚やしそ油などを積極的に摂取することです。また、バランスの良い食事をして、しっかり睡眠をとることで体調を整えることも大切です。
長期間にわたり症状を抑えたい!舌下免疫療法とは?
花粉症の症状を長期間にわたり抑え込みたいと願っている人は、花粉症舌下免疫療法を試してみるのも選択肢のひとつです。花粉症舌下免疫療法とは、花粉症の原因である花粉のエキスを持続的に舌の下に投与する治療法です。この方法により、花粉を異物と感知させないようにできる可能性があります。異物とみなされなければアレルギー反応も起こらなくなりますので、長期的に花粉症を抑えることにつながるというわけです。
2014年からは保険も適用されるようになりました。やり方としては、自分で処方してもらった花粉エキスを1日1回舌の下に投与して、1~2分程度待ったあと飲み込みます。継続する期間は3年程度が一般的です。花粉症が始まる前の6月~11月に治療を始めるのが良いとされています。花粉症の症状は薬や治療とあわせて、生活上の注意でも改善が期待できますので、シーズン前から早めに対処するようにしましょう。