アトピー性皮膚炎は、肌が荒れてかゆみや痛み、または肌が真っ赤になる症状を引き起こす病気です。
この病気は肌に症状が出る病気なので、症状が出た箇所に触れる、あるいは症状が出ている人と接触することで感染してしまうのではと思っている人も一部にはいます。
アトピー性皮膚炎は、肌に触れたり手をつないだり、キスをしたりするとうつるものなのでしょうか。
今回は、アトピー性皮膚炎は感染する病気なのかどうか、そして、アトピーにかかる原因などについて解説します。
「アトピー」とは
アトピーとは「アトピー性皮膚炎」が正式な名称で、もともとアレルギー体質の人、または皮膚を守るバリア機能が弱い人に多く見られる皮膚の炎症の病気を指します。
症状は慢性的に起こることがほとんどで、症状が出る状態、おさまった状態を繰り返すのが特徴です。
かゆみ、湿疹が主な症状で、他には肌が赤くなる、肌が荒れてささくれだつ、肌がかさかさになる、またはその逆で肌の表面がブヨブヨになり、ひっかくと液体が出るなどの症状が出ます。
症状の出る身体の場所は、おでこ、目や口のまわり、耳まわり、あるいは首、手足の関節の内側、脇などです。
アトピーになりやすい体質のことをアトピー素因と呼びます。
自身の家族の人がアトピー、あるいは喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、食べ物・動物アレルギーなどの症状が出る場合、遺伝的にそれらの体質を受け継いでいることがあります。
また、本人がアレルギー体質である場合、併発してアトピーになりやすいといわれています。
アトピーを発症する主な原因
アトピーを引き起こすのは、生まれ持った遺伝的な要因の他に、肌のバリア機能が低いことも原因です。
人間の皮膚は、表面上の皮脂膜、皮膚の下の組織である角質細胞、角質細胞間脂質が肌を守るバリアとしての役割を果たしています。
日々の生活をするうえで、ほこり、ダニ、カビといったハウスダストと呼ばれるもの、外出時における紫外線、石鹸や化粧品などの化学物質などにより、肌は刺激されます。
それらの刺激から肌を守るのがバリア機能なのです。また、バリア機能は皮膚の水分を保ち、皮膚の乾燥を抑制する働きもしています。
アトピーはバリア機能が低下しているため、外部からの皮膚への刺激、または爪でかゆい場所をひっかくなどの物理的な刺激が皮膚の下の組織まで入っていきやすい状態になっています。
そのため、皮膚が炎症を起こしてしまうのです。また、アトピーの症状が出ると特に角質細胞間脂質が減少していまい、皮膚が乾燥しやすくなります。この状態が続くとアトピーの症状であるかゆみや湿疹が出やすくなり、アトピーはますます悪化するのです。
また、アトピーの症状が続くと、皮膚にストレスがかかり免疫力が不安定になります。本来、肌に起こる炎症は外部から侵入してきた細菌などを退治するための免疫反応として起こるものです。
しかし、アトピーにかかると免疫が過剰に反応してしまい、本来退治しなくていいものにまで体内が反応し、炎症を引き起こしてしまう現象が起きます。体内が不安定になり炎症になりやすくなるのも、アトピーの特徴です。
アトピーに似た症状
アトピー性皮膚炎と似たような症状でありながら、アトピーとは違うものとして分類されている病気に「皮脂欠乏性皮膚炎」という皮膚疾患があります。
アトピーとの違いは、アトピーが幼少時など年齢に関係なく症状が出る病気であるのに対し、皮脂欠乏性皮膚炎は高齢者がかかりやすい病気であることです。
高齢者が皮脂欠乏性皮膚炎をよく引き起こすのは、身体の老化により皮膚のバリア機能の低下、皮脂分泌の低下により皮膚が乾燥しやすくなっていることが原因に挙げられています。
症状は、皮膚が乾燥して皮膚の表面にふけのような状態になった皮膚が付着するのが特徴です。また、ひざから足首までの部位に亀甲模様のシワが浮き出てかゆみが出ることもあります。
アトピーは感染症ではない
アトピー性皮膚炎は、家族でアトピーに悩まされている人がいると家族の別の一員がまたアトピーにかかるという現象があります。
そのため、アトピーは感染する病気ではないかと思っている人もいますが、それは間違いです。
家族の人の数人がアトピーの場合、遺伝による要因が強いためであって、身近にいる人からうつるわけではありません。
アトピーの原因は、遺伝的なもの、または肌のバリア機能、免疫力の低下によるものです。
つまり、アトピーにかかるための感染性の細菌というものは存在しないのです。
よって、アトピーによって荒れた肌に触れても、そこから感染することはありません。
アトピーを予防するには
アトピー性皮膚炎が発病すると肌のかゆみや痛みが持続して、かゆみから肌を引っかいてしまうとますます症状は悪化し、バリア機能もどんどん低下してしまいます。
アトピーの症状を防止するには、専門家である皮膚科の医師に相談をして症状をおさえる薬を処方してもらうことです。
また、普段の生活でもハウスダストに注意するために住居空間を清潔にする、または石鹸や消毒液など化学物質を症状の出た箇所に使用しないなどのケアが必要です。
症状が出ていないときは、肌のケアを怠らないようにして肌のうるおいを保つようにしましょう。
アトピーの主な症状や原因、治療法など:アレルギージャーナル